離れてもつながっている三人の家族の物語
20年ほどケアマネジャーをしていますが、最も印象に残っているのは、Sさんとその家族のこと。もう7年ほど前のことです。
Sさんは80歳男性で、パーキンソン症候群や下肢筋力の低下で杖をつきながら生活していました。妻Mさんは50歳、精神疾患で定期的に入院しています。2人は再婚同士で、10歳になる娘Aちゃんを含め3人で生活していました。
Mさんは病気のため強迫障害や情緒不安定などがあり、家事・育児が満足にできません。夫婦で金銭管理ができないため、その数年前から医療機関や児童相談所、行政、社会福祉協議会、相談支援事業所、ヘルパー事業所、ケアマネなどでケース会議を行い、家族の現状や緊急時の対応などについて話し合いを持っていました。
そのうちMさんの妄想が激しくなりました。しばらくはヘルパーやデイサービスなどの支援で様子を見守っていましたが、妻の相談支援員の助言もあり、Sさんの同意のもと医療保護入院となりました。
その時点で「3人の生活」は終わりを迎えました。
Aちゃんはその日のうちに児童相談所に連れて行かれ、Sさんはショートステイを利用、その後正式に施設入所となりました。
Aちゃんは間もなく里親さんの元で生活を始めました。里親さんがとてもいい方で、Aちゃんを連れて定期的にSさんの面会に来てくれました。小学校卒業時には中学の制服を着たAちゃんが、Sさんに卒業の報告に来てくれました。卒業証書を抱きながら泣いていたSさんの姿が、今でも目に焼き付いています。
その後、Sさんは施設でリハビリを頑張り、車いすから歩行器で歩けるまでに回復しました。
実は、私は「Mさんを入院させたことで家族がバラバラになってしまった。これで本当に良かったのだろうか」と自責の念に駆られていました。でも、施設で穏やかに生活しながらAちゃんとの面会を楽しみにしているSさん、里親さんの元で元気に学校に通い、時々Sさんに会いに来るAちゃんの2人の姿を見聞きし「これで良かったんだ」と思うようになりました。
Sさん家族が今、それぞれの場で生活ができているのは、この家族に関わってくれたたくさんの皆さんの支援のおかげだと、あらためて感謝しています。


