10月 グルメマガジン

吉野家

YUBARI

器の縁まで溢れんばかりに注がれた、黄色味を帯びた黒いつゆ。香辛料の香り漂うつゆにレンゲを入れると、予想以上にとろみがついていた。つゆというよりルーに近い。

「このとろみも夕張カレーそばの特徴なんですよ」。昭和4年創業の老舗「吉野家」の4代目店主、高橋一太さんが教えてくれた。
つゆは和風だしベースのたれを使った自家製。カレー粉は炒って使うという。つゆの表面には生クリームが筋状の円をつくり、工夫がうかがえた。
そばは手打ちの真っ白い更科そばで、箸で持ち上げると黒いつゆとのコントラストが鮮やか。ほどよい硬さでほのかにそばの風味が感じられ、スパイシーでコクのあるつゆとの相性も抜群だ。
具材は、これも夕張カレーそばを特徴づける豚バラ肉と玉ねぎのみと至ってシンプル。だが、そこには老舗のこだわりがある。「甘エビを素揚げして、エビのうま味を凝縮させた『エビ油』で炒めています。味にエビ独特の風味と深みが出るんです」と高橋さん。
最後は別途注文したライスを、残ったつゆに入れて「カレーライス」で。最後のひと匙まで熱々で楽しめた。

夕張カレーそばは、かつて石炭産業で栄えた夕張市で、炭鉱マンが空腹を満たしたという伝統の味。炭鉱閉山後も「夕張ならではの味」と口コミで評判が広がり、道内外から客を集める人気メニューとなった。有名コンビニ店も商品化し、今や全国区の知名度を誇る。

現在の提供店舗は4店で、夕張カレーそばの定義を守りながら、それぞれ特徴のある味を出している。4店舗で「夕張カレーそば協会」もつくり、高橋店主はその会長も務める。「夕張といえばカレーそばというのが定着しつつある。食を通して多くの人に夕張をPRしたい」と話す。

〔 ぷらすわん 〕
親子丼など他のメニューも美味。特に、夕張特産の長いもを使った「とろろざるそば」や「山かけそば」などは「長いものねばりが強くておいしい」と好評だ

〔 お店情報 〕
吉野家
夕張市本町4丁目
営業時間 午前11時半~午後2時半(材料がなくなり次第閉店)※予約を前提とした夜の宴会は当面行わず、昼の営業のみ
定休日 火曜(火曜以外も休む場合あり。11月~3月の冬期間は日曜定休で、土曜休業の場合もある)
座席数 22席
℡0123-52-2448(FAX兼用)

ライター : 末永 直樹

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